妻 あなた、どうしよう?。半年前に亡くなったお父さんの事で、きのうになって消費者金融会社から督促状が来たのよ!
夫 え!何それ?。何と書いてあったんだい?
妻 これを見て!相続人は、お母さんと私の姉妹の三人で、それぞれ相続人だから、借金全額200万円払えって書いてあるのよ。おとうさんが借金をしていたなんて、ぜんぜん知らなかったわ。競馬が好きだったから、消費者金融から借金して注ぎ込んでいたのね。頭に来るわ。こんな借金、お母さんや私たちが払わないといけないのかしら?
夫 そうだねえ。確かにサラ金会社の言うように、借金というのは土地建物、預貯金などのプラスの財産だけではなくて、借金のようなマイナスの財産も含むからなあ。だから、このままだと借金も相続していることになってしまうね。
妻 なにそれ。じゃあ、あたしが借金全部を支払わなければいけないことになるの?
夫 そうでもないよ。借金だけが相続財産の場合には、通常は、相続の放棄をすることが多いって聞いているよ。相続の放棄をすれば、借金を引き継ぐことはないんだ。もちろん、他の財産があっても全て相続をすることはできないことになるけどね。
妻 私の場合、父は遊び人だったから、全部財産使ってしまっていたので、相続の放棄をすれば大丈夫なのね。
夫 そうだね・・・ただ、一つ問題はあるんだ。本来は君が相続開始を知ったときから3ケ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申立てをしなければいけないんだ。もし、この決められた期間内に何の手続きも取らずにいると、相続人は借金も含めて相続を承認したものとみなされてしまうことになるんだよね。
妻 え?じゃあ、あたしの場合は3ヶ月はとっくに過ぎているから駄目だっていうの!?ひどいわ、そんな。
夫 まあ、待てよ・・・その点については、君のように借金があることを知らずにいた人の場合など、同情したくなるようなケースも生じるので、判例で、放棄の制限となる期間の開始についての「相続開始を知ったときから…」とは、遺産の存在を知ったとき、あるいはすぐに知ることができるようになった時からだとされているんだ。要するに借金があることを知らなかったのがやむを得ない事情がある場合には、相続放棄は認められるわけなんだ。
妻 じゃあ、父は私たち家族に一切秘密で借金をしていたので、大丈夫なのね。
夫 そうだね。ただ、あくまでも例外だから、借金がある場合には、3ヶ月以内に大至急、相続放棄をするように心がけておいた方がいいよ。それから、注意をして欲しいんだけど、お母様と君たち子どもの全員が相続の放棄をすると、お父様の兄弟が相続人となるんだ。だから、今度は兄弟が皆で相続放棄の手続をしなければならないんだよ。あらかじめ、そのことを兄弟の皆さんに伝えておいた方がいいと思うよ。
妻 そうね。でも、放棄の手続きって難しいのかしら。弁護士さんとか司法書士さんとかに頼まなければいけないかしら。
夫 そんなことはないよ。家庭裁判所に行って簡単な書類を出すだけだよ。放棄をしたら、受理証明書を貰って、それをサラ金会社に送れば、サラ金会社もそれ以上の督促はしないはずだよ。気を付けなければいけないのは、必ず家庭裁判所で手続きをするということだね。サラ金会社に「放棄します」と言っても駄目だからね。
妻 よく、わかったわ。じゃあ、これから相続の放棄に行って来るわね。もし、放棄が認められなかったら、グレて、家事も子育ても放棄してやるから覚悟しておいてよ!
夫 ・・・
法律事務所から通知書が届きました。内容は亡くなった父の借金について。相続をする場合は信用保証協会が代位返済したお金を法律事務所宛てに二週間以内に振り込むか、相続放棄の手続きをしてくださいとのこと。父には別に家庭があり子供もいます。私は父が亡くなったことを、この通知書で知りました。法律事務所を通して信用保証協会からの代位返済通知って届くのですか?私はまずどうすれば良いのでしょうか。さっさっと相続放棄をしたほうが良いのか迷っています。たしか父の財産は持ち家だけだったような記憶があります。
信用保証協会の保証を受けていたということは、被相続人は生前に事業を経営していたと考えられます。相続財産には事業収入によって築いたプラス財産もあるでしょうが、マイナス財産も給与所得者に比較して大きい場合が多々あります。しかも、協会が債権者に代位弁済したということは、返済資金に窮していたことが想像されます。つまり、プラス財産よりも大きいマイナス財産を相続することになる可能性が高いと考えらます。
相続人は、相続開始を知った時から3カ月の熟慮期間に相続財産を調査して、相続を放棄するか単純承認するか限定承認するか決定せねばなりません。調査に努めても3か月の期間が時間的に不足するときは、家裁に申し立ててその期間の伸長を受けることも可能ですが、調査のためには、「別の家庭」に問い合わせたり、そこの子供の協力を得ることが不可欠です。そのようにして相続財産を調査する意欲があり、できる見通しが設問者にあるなら、熟慮期間満了まで支払いを待ってもらいましょう。もうそんなこと、全然出来ない、と思うなら、さっさと放棄してしまいましょう。中途半端な調査で相続を承認してしまうと、後で多額の債務を負担する恐れがあります。
【民法】 (相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
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